日本の一般会計における国債費について

政治

日本の一般会計における国債費の現状と違和感

日本の一般会計における国債費は、国が発行した国債の元本返済や利子支払いに充てられる経費を指す。

令和6年度(2024年度)の予算では、歳出総額1,125,717億円のうち、国債費は270,090億円で、全体の約24.0%を占めている。この国債費の内訳は、債務償還費(元本返済)が172,957億円(15.4%)、利払費等が97,133億円(8.6%)となっている。

以下のテーブルは、国債費の詳細を示している。

歳出総額および国債費の内訳(令和6年度)

項目金額(兆円)割合(%)
歳出総額112.6100.0
国債費27.024.0
└ 債務償還費(元本返済)17.315.4
└ 利払費等9.78.6

これを見ると、国債の返済に 24% もの割合が充てられていることが分かる。これは、日本の歳出において非常に大きな割合を占めており、他の歳出項目に影響を与えている。


歳入面の状況

一方、歳入面では、租税及び印紙収入が 69.6080 兆円(61.8%)で、その内訳は所得税が 17.9050 兆円(15.9%)、法人税が 17.0460 兆円(15.1%)、消費税が 23.8230 兆円(21.2%)などとなっている。しかし、これらの収入だけでは歳出を賄いきれないため、公債金(国債の新規発行)として 35.4490 兆円(31.5%)が計上されている。

以下は、歳入の内訳を示すテーブルである。

歳入総額および内訳(令和6年度)

項目金額(兆円)割合(%)
歳入総額112.6100.0
租税及び印紙収入69.661.8
└ 所得税17.915.9
└ 法人税17.015.1
└ 消費税23.821.2
公債金(国債の新規発行)35.431.5

公債金の割合が 31.5% にも及んでいるのは、歳入の約 3 割を 新規の国債発行 に頼っていることを示している。これは、財政の健全性に対する大きな懸念材料である。


違和感の原因:借換債の存在

歳入の国債の償還費で 17兆円 を支払っている一方で、新たに 35兆円 を借り入れている。この情報だけを見ると、 17兆円の国債を償還して、35兆円を新規発行した ように見える。しかし、実際にはそうではない。

日本は、令和6年度に 約176兆円の国債の発行 を行っている。これは一般会計における 35兆円の新規発行額 とは大きく異なる数字だろう。この差額は借換債 だ。

借換債とは、 既存の国債で償還された分を、再度、借り換える(ロールする) ために発行されたものである。債券という形式上、 償還 という形を取っているが、償還された分を再度同じ金額だけ新規に発行しているため、実質的には借金の継続 をしているだけなのだ。


借換債を考慮した場合の歳出・歳入の実態

借換債の新規発行・償還を考慮した場合の歳出・歳入は、以下のようになる。

歳出総額および国債費の内訳(借換債を考慮)

項目金額(兆円)割合(%)
歳出総額288.5100.0
国債費202.770.5
└ 債務償還費(元本返済)193.070.4
└ 利払費等9.73.36

歳入総額および内訳(借換債を考慮)

項目金額(兆円)割合(%)
歳入総額253.0100.0
租税及び印紙収入69.627.5
└ 所得税17.97.1
└ 法人税17.06.7
└ 消費税23.89.4
公債金(国債の新規発行)176.069.6

借換債を含めた場合、歳出総額は288.5兆円 となり、そのうち 70.5%国債費 に充てられている。これは、国の歳出の大半が 借金の返済および新規借入 に充てられていることになる。

実際の国債の新規発行・償還をそのまま一般会計すると、借金の借り換えばかりをしていることがわかるだろう。

しかし、日本ではどのようなルールで一般会計の償還額を決めているのだろうか?。実は、国債の償還については、60年償還ルールと言う特別なルールが存在する。このルールに則って計上される償還分というのが、一般会計に計上される償還になるのだ。


60年償還ルールの現状と問題点

前述の通り、日本の国債には、60年償還ルール という制度がある。これは、発行された国債の元本を60年間かけて償還すればよいという規則だ。具体的には、毎年元本の1/60を償還 することになっている。この仕組みによって、国債の元本は徐々に返済されていくことになる。

しかし、現実にはこの償還分は借換債で賄っている のが現状だ。つまり、返済するための現金を用意しているわけではなく、新たに借金をして既存の借金を返している 状況になっている。

簡単な例で見る60年償還ルールの仕組み

例:60兆円の10年債を発行した場合

具体例として、60兆円の10年債を発行 した場合を考えてみよう。この場合、翌年度の予算には 1兆円の償還 が発生する。これは、60兆円の元本を60年で割った額(1/60) だ。この1兆円は、一般会計から国債整理基金特別会計に繰り入れられる

特別会計への繰り入れと現金の扱い

この 1兆円の繰り入れ予算 は、特別な使い道がない限り、現金としてそのまま積み立てられる ことになっている。10年後には 60兆円の償還が到来 するが、実際には以下のように処理される。

  1. 50兆円分は借換債として再度発行 する。
  2. 残りの 10兆円は積み立てていた予算 を使って、現金で償還 する。
  3. 必要に応じて 10兆円分の新規国債発行 を行う。

現実との乖離:積立金がほとんどない現状

しかし、現状では国債整理基金特別会計に積み立てられた償還分の現金はほとんど存在しない。なぜなら、積立金は他の国債の償還費に流用 されているからだ。つまり、見かけ上は積み立てているように見えて、実際には借金の返済に回っている。つまり、なんの意味もないのだ。


本当に必要な会計処理なのか?

ここで疑問が浮かぶ。こんな複雑な会計処理が本当に必要なのだろうか?
60年償還ルールは、一見すると 元本を徐々に返済している ように見える。しかし、実際には 借換債によって借金を先送り しているだけであり、実質的な返済が行われていない のが現状だ。

あまりにも複雑な会計処理のため、多くの人が理解に苦しむ ようになっている。国民にとっての分かりにくさは、財政状況の透明性を損なう 要因にもなっている。


借金は増え続けているのに抑制できない

現時点で、日本の国債残高は 1,100兆円を超えている。この莫大な金額にもかかわらず、借金は増え続けている のが実情だ。本来であれば、国債残高の増加を抑制 する必要があるが、60年償還ルールは その役割を果たしていない


改善案:無駄な償還費の計上をやめる

現状の複雑な会計処理を改善するために、無駄な償還費の計上をやめる べきだ。
具体的には、借り換えを行った場合には、償還費の計上を取りやめる。その代わりに、新規の国債発行額が減る だけにする。
これにより、数字上の操作に過ぎない償還費の計上 を避けることができ、歳入と歳出の透明性が向上 する。


改善後の例

改善前

項目金額(兆円)割合(%)
歳出総額95.3100.0
国債費9.710.18
└ 利払費等9.710.18
項目金額(兆円)割合(%)
歳入総額95.276100.0
租税及び印紙収入69.673.1
└ 所得税17.918.8
└ 法人税17.017.9
└ 消費税23.825.0
公債金(新規発行)18.219.1

改善後のポイント

  • 借金に対する利払い費用が明確 になる。
  • 新規の国債発行額が18兆円 と明示され、その分だけ 日本国債の増加が把握できる
  • 複雑な60年償還ルールを廃止 することで、財政の透明性が高まる

60年償還ルールの撤廃を

60年償還ルールは、もはや意味を成していない
当初の目的は、償還のための安定的な資金の確保 だったが、現状ではまったく機能していない
この複雑な会計処理を続けるよりも、わかりやすく、透明性の高い会計処理に移行 すべきだ。

国民が理解できない歳出・歳入 では、政策判断の基礎となる財政状況の把握が困難 になる。
今こそ、60年償還ルールの見直し が必要だ。

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