暴落を予想した場合、売却するべきか?

投資

暴落は可能であれば避けたいものである。事前に察知できるのであれば、資産を守るために適切な対策を講じることが望ましい。しかし、現実には暴落を正確に予測するのは極めて難しい。仮に予想が的中しても、利益が出ている投資を売却する場合、税金の支払いが必要となる。

税金を支払うということは、手元に残る資産が減少することを意味する。そのため、税金分以上に相場が下落しなければ、売却しても資産が増えない。再投資によって元の口数以上を取得できる場合にのみ、売却する意味があると言える。

具体例

100万円の投資元本が100%の利益を上げているファンドを考える。この場合、購入時に100万口を保有していたとする。すなわち、1万口あたり1万円の価格で購入したことになる。現在の評価額は200万円である。ここで、10%の暴落を予想したと仮定しよう。税率は20%とする。

  • 売却時の資産: 200万円
  • 税金: (200万円 – 100万円)× 20% = 20万円
  • 手元に残る資産: 200万円 – 20万円 = 180万円

予想通りに10%の暴落が発生し、その後に相場が回復した場合、180万円で再投資することを考える。

  • 暴落前の価格: 1万口あたり2万円
  • 暴落後の価格: 1万口あたり1万8000円(10%下落後)

再投資可能な口数は次の通り。

再投資口数=180万円1万8000円×10000口=100万口

結果として、売却前後で保有口数は変わらない。


暴落幅別のシミュレーション

仮に5%の下落を予想し、同様の行動を取った場合。

  • 暴落後の価格: 1万9000円(5%下落)
  • 再投資口数:180万円1万9000円×10000口=947,368口

当初の100万口よりも少なくなる。

一方、20%の暴落を予想した場合は次の通り。

  • 暴落後の価格: 1万6000円(20%下落)
  • 再投資口数:180万円1万6000円×10000口=1,125,000口

この場合、当初より多くの口数を取得できる。

税金の影響と相場の下落幅

税金の支払いは投資パフォーマンスに大きな影響を与える。100%の利益を上げている投資家は、10%以上の下落がなければ、保有口数を増やすことはできない。

以下に、評価益の割合ごとに得をするために必要な相場の下落幅を示す。

評価益割合得をするための相場の下落幅
10%1.8%
20%3.3%
30%4.6%
50%6.7%
100%10.0%
200%13.3%
300%15.0%
400%16.0%
500%16.7%
1000%18.2%

例えば、5倍の利益が出ている銘柄を保有している場合、16.7%以上の下落を予想できる場合にのみ、税金を払ってでも売却した方が有利になる。10バーガーを実現した投資家は、18.2%だ。

ちなみに、評価益の割合を無限大に持っていけば、得をするために必要な下落幅は20%だ。

結論

このシミュレーションから明らかなように、税金の影響を考慮すると、一定以上の暴落が予測できる場合にのみ 売却するのが有利である。しかし、実際にそこまで正確に相場の下落を予測することは非常に難しい。ニュース、経済指標、テクニカル分析を駆使しても、完璧な予想は不可能に近い。

売却の判断を行う際には、単に暴落を予想するだけではなく、税金の支払いによる影響を十分に考慮することが不可欠である。また、長期投資の視点を持ち、短期的な相場の変動に一喜一憂せず、リスクを許容しながら資産を増やしていくことも一つの戦略となる。


まとめ

  • 暴落を予想して売却することは一見有利に見えるが、税金の影響を考慮しなければならない
  • 利益が大きい場合ほど、税金による影響が大きくなるため、より大きな暴落が必要
  • 一定以上の下落を正確に予想できる場合のみ、売却して再投資する方が有利になる
  • 多くの人は、下落を正確に予想できない。予想できたとしても、税金の影響を考慮することで、期待したほどの利益を得られないことがある。

最後に

暴落を事前に察知できた場合、確かに売却したほうが有利である。しかし、問題となるのはその暴落の度合と自分の利益の割合を考慮することである。

例えば、100%の利益を得ている人であれば、10%以上の下落が起きないと売却しても損をする。

しかも、10%の下落を正確に予想できる人がどれだけいるだろうか? 多くの場合、下落が始まって慌てて売却するか、大きく下落してから諦めて売却することが多いのではないだろうか。


考察

  • 多くの人は下落を予想できない。予想できたとしても、得をするためには税金の影響を考慮し、十分な下落幅を見積もらなければならない。
  • 短期的な値動きに惑わされず、長期的な視点で投資を続けることも一つの選択肢である。

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