為替レートと海外・内国の金利の関係について

為替レートと金利の関係は、経済や投資の基本的なテーマの一つである。一般的には、金利差によって資本が移動するために、金利差は為替レートに大きな影響を与える。つまり、投資家はより高い利回りを求めるため、高金利の国の通貨を購入する傾向があり、これが通貨の需要を高め、為替レートに影響を与える。一般的には高金利の国は投資先として、その通貨が買われ、通貨高になりやすい。また、逆に、低金利の国は資金が流出し、通貨安になることがある。

本当に金利差だけが為替を動かすのか?

しかし、本当にそうなのだろうか。直近のドル円為替相場を見ていると、確かに金利差が注目され続けている。しかし、以前にはそれほど注目されておらず、低金利の円でお金を借りて、金利が高い通貨に投資するような円キャリートレードの動きが中心に報道されていたように思える。

そのため、金利差と為替相場の動きについて実証分析を行った。

金利差と為替レートの実証分析

以下のグラフは、縦軸にドル円の為替レート、横軸に10年の米国金利と日本金利の国債利回りの差を散布図でプロットしたものである。データは1990年から2024年までの34年間であり、約5年程度で分類して年別にプロットしている。

1990年から2024年の動向

まずは1990年から2024年までを見ていく。

これを見る限りでは、金利差と為替レートがうまく比例関係になっている年もあれば、そうでもない年もある。しかし、2020年から2024年までの為替レートは見事な程に為替レートと金利差が比例関係になっている。

最近の円安と金利差の関係

直近は急速な円安が進んでおり、日本の国力が低下したから円安になったと言われてきた。そのため、1ドル200円もの予想も出てきたことを覚えている。しかしながら、この期間については概ね金利差で説明がつく(上記のグラフの右下)。

この期間だけで言えば、金利差が開いたから為替が円安になっただけのことだったのだ。しかし、国力の低下という話が出てきたのもある程度は理解できる。

国力低下と通貨の信頼性の変化

2007年の金利差と為替レートを見てみると、約3%の金利差で為替レートは120円だった。しかし、2024年で見てみると、金利差3%で為替レートは145円が中央値と見なせるだろう。そうなると、その差は国力の低下の差、つまり通貨としての信頼がなくなってきているという説明もできる。

金利差だけでは説明できない理由

基本的には為替レートは需給で決まるため、金利差だけでは決まらないだろう。しかし、直近の期間で、為替レートがこれだけ金利差だけで説明できる期間も珍しい。

今までは金利差だけでは説明できない理由があったことは明確だろう。つまり、日本は世界一の債権国であり、金利が低く、日本の製品も質が良く、そして日本は世界に信頼されていた。

しかし、一方で日本の負債の大きさ、成長率の低さ、人口の減少なども顕在化しつつあり、これらの影響で普通の国に変わっていったと解釈もできる。

金利差が示す米国と日本の関係の変化

金利差だけで米国と日本の為替レートが説明できるのであれば、米国と日本で国力の差がなくなってきたとも言えるだろう。

年別の為替レートと金利差の時系列グラフ

以下では年別の為替レートと金利差の時系列をプロットした。

年に応じて大きく差があることがわかるだろう。

相関係数ごとの年代の分類

以下では、相関係数の大きさで為替レートと金利差を時系列でプロットした。2019年から相関係数が継続して高いことがわかるだろう。

相関係数 0.7以上
相関係数 0.3以上 0.7未満
相関係数 ▲0.3未満
相関係数が ▲0.3 以上 0.3未満

年と相関係数の表形式

グラフだとわかりにくいので、表形式で以下に出力した。

年度相関係数
19900.70
19910.45
19920.43
19930.41
1994-0.66
1995-0.52
19960.69
19970.39
19980.54
1999-0.34
2000-0.42
20010.24
20020.59
20030.45
20040.20
20050.24
2006-0.39
20070.91
20080.79
2009-0.16
20100.79
20110.90
20120.46
20130.56
2014-0.56
20150.69
20160.59
20170.75
20180.31
20190.73
20200.51
20210.61
20220.95
20230.88
20240.49

結論

現在の為替相場は、金利差が大きく注目されている。そのため、FRBや日銀の政策運営が大きく注目されるだろう。

一方で、為替レートはその時の参加者の考えによって、その値や需給が変わる。そのため、現在の為替の参加者が何を考えているのかを注目しておく必要があるだろう。

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