暴落を事前に回避できたらパフォーマンスはどうなるのか? その2

投資

以前は月次単位で暴落や上昇を回避できた場合の影響を計算したが、今回は日次単位でのパフォーマンスを検証した。もし、日ごとの値動きを正確に捉え、適切なタイミングで市場から離脱し、再参入することができたら、パフォーマンスはどうなるだろうか?

2008年1月から直近までの4,298日分の市場データをもとに、日次ベースでの暴落や上昇の影響を分析した。これは、事前に市場の大きな動きを見越して適切な対応ができた場合の理想的なポートフォリオのパフォーマンスを示している。

まずは、市場の極端な値動きを示すデータとして、暴落時(下落時)と上昇時の上位10件を以下に示す。

暴落時(下落時)の上位10件

日付リターン (%)
2020-03-13-11.98
2020-03-11-9.51
2008-10-14-9.03
2008-11-28-8.93
2008-09-26-8.81
2008-10-08-7.62
2020-03-06-7.60
2008-11-19-6.71
2011-08-05-6.66
2008-11-18-6.12

上昇時の上位10件

日付リターン (%)
2008-10-1011.58
2008-10-2710.79
2020-03-239.38
2020-03-129.29
2009-03-207.08
2020-04-037.03
2008-11-126.92
2008-11-216.47
2009-03-096.37
2008-11-206.32

一日で-11.98%の暴落が発生し、一方で最大11.58%の上昇も起こっている。

次に、上記の極端な値を除外した場合の市場の平均リターンを算出した。ここで除外というのは、一時的に無税でキャッシュにしたと考えればイメージしやすいだろう。

全体の平均および極端値を除外した場合の指数とリターン

条件指数リターン (%)
全体の平均413.4710.27
ワースト1回を回避469.7610.97
ワースト5回を回避687.1813.08
ワースト10回を回避984.7415.09
ベスト1回を逃す370.569.59
ベスト5回を逃す261.307.47
ベスト10回を逃す189.625.54

指数は2007年12月末を100として計算した。どうだろうか? 4,200日程度あるうちのたった1日の暴落を回避できれば、資産は13%も増加する。他の4日も避けられれば、なんと資産は66%も上昇する。10日間の大暴落を回避できれば、指数は140%も増加し、結果として資産は約2.4倍になる。たった4200日のうち10日間の判断がそれほど大きな影響を及ぼすのだ。

一方で、上昇のチャンスを逃した場合はどうなるか? たった1日の大きな上昇を逃せば、資産は11%低下する。5回逃せば37%減少し、10回逃すと55%も資産が減る。

どうだろうか? 4,200日のうちのたった10日の上昇を逃しただけで、資産は半分以下になってしまうのだ。

この結果は衝撃的ではないだろうか? 月次での分析よりも、日次で考えた場合の衝撃はさらに大きい。大きな下落があっても耐えなければならず、同時に上昇の波に乗るためには市場にとどまり続ける必要がある。マーケットは投資家の心理を大きく揺さぶる存在だ。

4500日間のたった10回の暴落を避けることができれば、資産は2.4倍に増える。しかし、10回の大きな上昇を逃してしまえば、資産は半分以下になる。この極端な変動に耐えなければならない。

また、周囲を見渡しても、市場の上昇や下落を事前に正確に予測できる者はほとんど存在しない。過去のデータが示すように、市場は常に上昇と下落を交互に繰り返す。多くの投資家は、この変動に晒されながらも資産運用を続けざるを得ず、下落時の不安に耐えると同時に、上昇時の喜びを享受するしかない状況に置かれている。こうした市場の波に翻弄される中で、冷静な判断と長期的視点を維持することの重要性は、改めて認識されるべきである。

このような市場の動向に対して、投資家が採るべき唯一の対策は、マーケットに振り回されずに冷静さを保つことである。市場に資産を保持している限り、ほとんどの期間は穏やかに推移するものの、時折驚くほどの暴落が訪れ、不安を抱かざるを得ない場面が生じる。また、予期せぬ上昇局面も存在する。こうした状況下では、一喜一憂せず、淡々と市場と向き合う姿勢が求められる。短期的な変動に左右されるのではなく、10年先を見据えた長期的な戦略で市場と対峙することが、投資成功の鍵となる。

短期的な変動ではなく、10年先を見据えながら市場とうまく付き合うことが求められる。

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