日経で以下のような記事があった。
金融危機に学ぶ積み立ての重要性 損益回復は株価に先行
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD077IR0X00C25A4000000/?n_cid=SNSTW005
株式市場の暴落は、絶好のチャンス
株式市場の暴落は、インデックス投資家にとって株を割安に買う絶好の機会となる。しかし、頭では理解していても、実際に暴落に直面したときは「いつかは回復するだろう」と信じつつも、その「いつか」が見えないことへの不安に悩まされることが多い。心理的な負担が重く、結果的に積立を中止してしまう投資家も少なくない。
このような不安を和らげるためには、過去のデータが強力な指針になる。もちろん、未来の市場動向を正確に予測することは不可能だが、100年以上にわたる株式市場の歴史を振り返ると、似たようなパターンが繰り返し現れることが多い。古くから「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」と言われるように、相場も例外ではない。確かに、過去と同じ暴落が再び起きる保証はどこにもない。ただし、マーク・トウェインが「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」と表現したように、過去の相場の動きからは一定の示唆が得られるものだ。
暴落時も、積立を継続した場合に報われる期間
そこで今回は、S&P500の過去の暴落データを用いて、「暴落のさなかに毎日積立を続けた場合、その投資はどれくらいの期間で報われるのか」を検証した。なお、分析はドル建てで実施しており、日本円への換算は行っていない。
分析結果は以下の通り。
期間 | 暴落から回復までの期間 | 毎日積立が報われるまでの期間 |
---|---|---|
1929年9月~1954年9月 | 25年 | 12.5年 |
2000年3月~2007年5月 | 7年 | 4.5年 |
2007年10月~2013年3月 | 5.5年 | 3年 |
この表から見て取れるのは、株価が元の水準に戻るまでの期間に比べて、積立投資はその約半分の期間でプラスリターンに転じているという事実だ。つまり、仮に市場全体が長期的に低迷していても、積立を継続していれば、想像以上に早い段階で含み益を得ることができる。
具体的な計算結果
ここからは、さらに結果を詳しく見ていきたい。
下のグラフを確認してほしい。これは、1929年9月から1954年9月までのS&P500の株価推移を示している。この期間は、世界恐慌からの回復に実に25年もの歳月を要した、歴史的にも特筆すべき長期低迷期だ。

しかし、その長期停滞の中でも、毎日S&P500に一定額を積み立てた場合のパフォーマンスはどうだったのか。以下のグラフ内に「評価額 ÷ 投資額」の比率で示した線が描かれており、これにより積立投資がいつ元本を超えるリターンを達成したのかが一目でわかる。特に赤い線を引いた期間より、その比率が1を下回ることはなかった。

注意してほしい点は、株価そのものは25年をかけてようやく元の水準に戻った一方で、積立投資の方は約12.5年という半分程度の期間で元本を上回る結果を出していたことだ。これは単に「底値で一括購入」することとは異なり、継続的な積立により取得価格の平均が引き下げられる「ドルコスト平均法」の威力を示す好例と言える。
ITバブル崩壊後の2000年3月~2007年5月、リーマン・ショック後の2007年10月~2013年3月についても、同様の傾向が見られる。それぞれの期間についても、以下にグラフを掲載しているので参照してほしい。
ITバブル崩壊時


リーマンショック時


得られる教訓について
このデータから得られる教訓はきわめてシンプルだ。
- 将来性がある資産クラスを選ぶこと。
- 暴落時でもブレることなく積立を継続すること。
- そして何より、市場から退場しないこと。
暴落は精神的にも経済的にも厳しい試練を伴うが、その中で淡々と積立を続けることが、結局は長期的なリターンを手にするための最良の戦略であるといえる。
コメント