NISAと贈与税

投資

配偶者に資金を移したいと考えている。しかし、贈与税を支払ったとしても、実際にどの程度を渡すのが妥当なのかを検討する必要がある。事前に贈与税を負担する方が、結果として有利になるのかどうかを確認するために、シミュレーションを行った。

投資対象はオルカン(全世界株式インデックス)もしくはS&P500を想定し、年率利回りは7%から10%程度を見込んでいる。仮にその前提で考えた場合、相続税を払ってでも、早めに配偶者へ資金を移した方が有利となるのかが問題になる。

今回は、総額1500万円を贈与するケースを想定している。ただし、これは定額贈与として明確に毎年同額を贈与するわけではなく、あくまでトータルでの贈与額を想定したものである。

わかりやすい事例として、100万円を贈与した場合、基礎控除の範囲内であれば贈与税は発生しない(もちろん、定期贈与と認定されないことが前提条件となる)。その場合、15年をかけて少しずつ贈与するという形になる。一方で、300万円を一度に贈与した場合、贈与税が19万円かかり、実際に相手に渡るのは281万円となる。同様に、500万円を渡せば447万円、1500万円を一括贈与すると、実質的には1048万円しか渡らないことになる。

投資の基本としては、右肩上がりに成長を続けるファンドに投資する場合、一括投資の方がパフォーマンスが良いことが知られている。しかし、実際に一括で贈与してしまえば、贈与税の負担が大きくのしかかる。このトレードオフが重要な判断ポイントになる。

では、利回りが7%の場合と10%の場合で、最終的なパフォーマンスはどの程度違ってくるのかを確認してみる。以下は、贈与を開始した年を0年とし、20年間のシミュレーションを行った結果である。


想定利回り 7%

100万×15年合計300万×5年合計500万×3年合計1500万×1年合計
01001002812814474471047.51048
11002072815824479251121
210032128190344714371199
3100444281124815381283
4100575281161616451373
5100715172917601469
6100865185018841572
71001026198020161682
81001198211821571800
91001382226623081926
101001578242524692061
111001789259526422205
121002014277728272359
131002255297130252524
141002513317932372701
152689340134632890
162877363937063092
173078389439653309
183294416742423540
193524445845393788
203771477148574053

20年後の金額

  • 年100万円:3771万円
  • 年300万円:4771万円
  • 年500万円:4857万円
  • 一括1500万円:4053万円

想定利回り 10%

100万×15年合計300万×5年合計500万×3年合計1500万×1年合計
01001002812814474471047.51048
11002102815904479391152
210033128193044714801267
3100464281130416281394
4100611281171617901534
5100772188719691687
6100949207621661856
71001144228323832041
81001358251226212245
91001594276328832470
101001853303931722717
111002138334334892989
121002452367738383288
131002797404542213616
141003177445046443978
153495489551084376
163844538456194813
174229592261815295
184652651567995824
195117716674786406
205629788382267047

20年後の金額

  • 年100万円:5629万円
  • 年300万円:7883万円
  • 年500万円:8226万円
  • 一括1500万円:7047万円

想定利回り 5%

想定利回り 5%

100万×15年合計300万×5年合計500万×3年合計1500万×1年合計
01001002812814474471047.51048
11002052815764479161100
210031528188644714091155
3100431281121114801213
4100553281155315541273
5100680163016311337
6100814171217131404
7100955179717981474
81001103188718881548
91001258198219831625
101001421208120821706
111001592218521861792
121001771229422951881
131001960240924101975
141002158252925312074
152266265626572178
162379278827902287
172498292829302401
182623307430762521
192754322832302647
202892338933912779

    20年後の金額

    • 年100万円:2892万円
    • 年300万円:3389万円
    • 年500万円:3391万円
    • 一括1500万円:2779万円

    20年後の金額シミュレーション(単位:万円)

    贈与方法利回り5%利回り7%利回り10%
    100万円×15年2892(145/年)3771(189/年)5629(281/年)
    300万円×5年3389(169/年)4771(239/年)7883(394/年)
    500万円×3年3391(170/年)4857(243/年)8226(411/年)
    1500万円×1年2779(139/年)4053(203/年)7047(352/年)

    まとめ

    5%から10%の利回りで比較すると、以下のような結論に至る。

    • 年100万円ずつ贈与する場合、贈与税を回避できるが、投資開始が分散されるため、機会損失が発生する。
    • 一括1500万円では、贈与税の負担が大きすぎ、リターン5~10%のレンジでは20年間の運用でも取り返せない。
    • よって、300万~500万円程度の贈与が最もバランスが良いと考えられる。特に市場が大きく下落したタイミングでは多めに贈与し、好調時には贈与額を抑えるといった調整ができれば理想的だが、現実的にそれを実行できる投資家は少数だろう。

    結論として、年5~10%程度のリターンを期待できる投資先であれば、配偶者への贈与額は300万円から500万円のレンジが妥当である。

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました