株式投資において、日々のリターンに過度に注目することは避けるべきである。
その理由を以下にまとめた。
1. 日々のリターンはボラティリティが高い
2000年から直近までのS&P 500のデータを基に、日次・週次・月次でリターンの標準偏差を計算した。以下はその結果である(標準偏差は年率換算済み)。
期間 | Daily | Weekly | Monthly |
---|---|---|---|
2000-2005 | 20.2% | 19.1% | 17.9% |
2005-2010 | 24.0% | 20.1% | 18.6% |
2010-2015 | 15.9% | 15.2% | 13.3% |
2015-2020 | 13.4% | 12.5% | 11.3% |
2020-2024 | 21.4% | 19.2% | 18.9% |
この表からわかるように、日次(Daily)のリターンは非常に変動が激しく、心理的な負担が大きい。一方で、週次や月次に注目すれば、変動が緩和されており、全体の傾向を把握しやすくなる。
2. 長期的な視点が必要
標準偏差と同様に、リターンの計算も行った。以下は日次・週次・月次リターンの比較結果である(以下の表も年率換算済み)。
期間 | Daily | Weekly | Monthly |
---|---|---|---|
2000-2005 | -1.8% | -1.7% | -2.1% |
2005-2010 | 1.7% | 1.2% | 0.8% |
2010-2015 | 13.1% | 12.7% | 12.7% |
2015-2020 | 10.0% | 10.1% | 10.2% |
2020-2025 | 14.6% | 14.2% | 14.0% |
リターンの平均値は日次・週次・月次でほとんど変わらない。しかし、標準偏差(リスク)は日次が最も高く、月次が最も低い。これは、株式市場が「上がっては下がる」を繰り返しながらも、長期的には上昇する傾向があることを示している。日々のリターンを追うことは心理的負担を増やすだけであり、投資の判断に意味を持たない。
3. ファットテール(極端なリターン)の存在
日次・週次・月次リターンが1σ(標準偏差)の範囲内に収まる割合を計算した。正規分布であれば、1σには68.3%が収まる計算になる。
期間 | Daily | Weekly | Monthly |
---|---|---|---|
2000-2005 | 73.2% | 74.4% | 71.6% |
2005-2010 | 82.8% | 80.9% | 81.5% |
2010-2015 | 77.3% | 74.1% | 74.7% |
2015-2020 | 76.9% | 78.4% | 74.3% |
2020-2025 | 80.0% | 76.9% | 78.5% |
計算結果はすべて理論値を上回り、その頻度のリターンにおいても、その分布がファットテールであることを示している。
特に日次リターンでは、1σ以内に収まる割合が高いが、これは極端なリターンが発生する頻度も高いことを意味している。これに対し、週次や月次では分布が安定し、極端な値の発生頻度が低下する。これは長期的に見ると市場の変動が緩やかになることを裏付ける結果である。
4. 投資の推奨方法
投資の判断は短期的な変動に左右されるべきではない。以下のような方針が推奨される。
- 長期的な視点を持ち、日次のリターンを追うのではなく、週次や月次のリターンに注目する。
- 個別株ではなく、インデックス中心のポートフォリオを構築する。
- アメリカ市場を基軸にしつつ、全世界に分散した投資(例: オールカントリー型ファンド)を活用し、リスクを分散する。
結論
日々のリターンに惑わされることは投資判断を誤らせる。株式市場の特性として、短期的な変動は避けられないが、長期的には安定した上昇傾向が期待できる。長期投資を志向し、分散されたポートフォリオを構築することで、リスクを抑えつつ市場の成長を享受できる。
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