ダウ・ジョーンズ指数は、S&P Dow Jones Indices社の指数委員会が構成銘柄を決定する指数で、30銘柄で構成される。一方で、S&P 500は米国の大企業500社で構成されており、カバレッジが広い。ダウ・ジョーンズは委員会がアメリカを代表する企業を選択する判断が入りやすいが、S&P 500はそのような主観的要素が入りにくい指数といえる。
ダウ・ジョーンズは価格加重平均方式を採用しており、構成銘柄の株価の変化が指数に影響を与える。一方で、S&P 500は時価総額加重平均方式で算出されるため、市場全体の動きをより正確に反映するとされている。
このように、ダウ・ジョーンズは委員会の選定に依存する要素が強い指数であり、S&P 500は市場全体の平均に近いパフォーマンスを示す指数と言える。簡単に言えば、指数委員会の判断で選ばれた銘柄と市場平均のパフォーマンスの比較という構図になる。
リターンの比較
1970年から2023年までのリターンを比較すると以下の通り。
年 | S&P 500 (%) | ダウ・ジョーンズ (%) |
---|---|---|
1971 | 11.5 | 7.1 |
1972 | 17.1 | 16.0 |
1973 | -18.0 | -17.1 |
1974 | -28.1 | -26.1 |
1975 | 29.4 | 35.9 |
1976 | 17.7 | 16.4 |
1977 | -12.3 | -18.2 |
1978 | 3.1 | -0.8 |
1979 | 9.3 | 1.6 |
1980 | 28.9 | 18.0 |
1981 | -10.0 | -9.3 |
1982 | 12.7 | 16.4 |
1983 | 18.6 | 22.0 |
1984 | 0.8 | -4.3 |
1985 | 26.7 | 28.3 |
1986 | 17.6 | 25.3 |
1987 | 3.9 | 4.6 |
1988 | 7.6 | 6.4 |
1989 | 30.6 | 31.0 |
1990 | -9.2 | -7.1 |
1991 | 27.8 | 21.5 |
1992 | 4.3 | 4.3 |
1993 | 6.9 | 13.5 |
1994 | -1.4 | 2.2 |
1995 | 35.2 | 34.9 |
1996 | 18.7 | 24.4 |
1997 | 32.3 | 23.6 |
1998 | 26.0 | 15.3 |
1999 | 18.5 | 23.7 |
2000 | -11.8 | -6.3 |
2001 | -10.0 | -5.4 |
2002 | -21.3 | -14.6 |
2003 | 21.9 | 20.9 |
2004 | 8.4 | 3.1 |
2005 | 5.6 | 1.1 |
2006 | 11.6 | 15.0 |
2007 | 2.2 | 4.6 |
2008 | -35.6 | -30.7 |
2009 | 21.6 | 17.1 |
2010 | 12.3 | 10.3 |
2011 | 0.4 | 6.2 |
2012 | 14.5 | 8.2 |
2013 | 25.3 | 22.6 |
2014 | 12.3 | 8.5 |
2015 | -2.2 | -3.8 |
2016 | 12.2 | 15.9 |
2017 | 19.4 | 24.9 |
2018 | -6.9 | -6.0 |
2019 | 29.8 | 23.7 |
2020 | 13.6 | 4.7 |
2021 | 29.6 | 21.0 |
2022 | -20.3 | -9.4 |
2023 | 24.0 | 13.8 |
平均リターンは以下の通り。
指数 | 平均リターン |
---|---|
S&P 500 | 9.1% |
ダウ・ジョーンズ | 8.6% |
差は0.5%程度であり、ダウ・ジョーンズのパフォーマンスも悪くないことが分かる。
上記のリターンを1970年を100として指数化したグラフは以下の通り。直近でSP500のほうが差が出てきているが、ほとんど同じようなパフォーマンスと言える。
考察
2020年頃から両指数の差が広がっている。S&P 500には「マグニフィセント7(Apple、Microsoft、Amazon、NVIDIA、Google、Meta、Tesla)」が含まれているが、ダウ・ジョーンズではAppleとMicrosoftしか入っていない。この違いが直近のパフォーマンス差を生んでいる。
指数委員会の判断は適切だが、現代の急速な市場の変化には対応が難しい場合がある。収益性の高い成長銘柄を取り込むまでに時間がかかり、指数への反映が遅れることが課題となる。
一方、S&P 500は市場全体を広くカバーしており、成長性の高い銘柄も初期段階から含まれる。そのため、市場平均としての強みが際立つ。
総じて、今後の収益性を重視するなら、S&P 500の方が有利な面が多いと言える。一方で、ダウ・ジョーンズも選抜された企業群による安定したパフォーマンスを示しており、比較対象としての価値は高いが、やっぱり投資をするのであればSP500のほうが恣意性がなく、かつこれからの新しい企業を取り込みやすい点で優れていると考えられる。
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