[2023年1月] 法人が所有する建物等を対象とした火災保険から受け取る保険金と圧縮記帳に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。 なお、 契約している火災保険の契約者(=保険料負担者) および保険金受取人は法人であるものとする。
- 工場建物および建物内に収容されている機械が全焼し、同一事業年度中に受け取った火災保険金で、 焼失前と同様の工場建物および同一の機械を新たに取得した場合、 当該工場建物・機械ともに圧縮記帳の対象となる。
- 工場建物が全焼し、 同一事業年度中に受け取った火災保険金で、 その滅失した工場建物と同一種類に区分される倉庫建物を新築した場合、 当該倉庫建物は圧縮記帳の対象とならない。
- 工場建物が全焼し、 同一事業年度中に受け取った火災保険金で、 当該工場建物が滅失等をしたときにおいて現に建設中であった他の工場建物を完成させた場合、完成後の工場建物は圧縮記帳の対象となる。
- 保険金で取得した代替資産の圧縮限度額を算出する際、「所有固定資産の滅失または損壊により支出する経費」 には、 ケガ人に対する見舞金を含めることができる。
各選択肢の検討
選択肢1:✅ 適切
工場建物および建物内に収容されている機械が全焼し、同一事業年度中に受け取った火災保険金で、焼失前と同様の工場建物および同一の機械を新たに取得した場合、当該工場建物・機械ともに圧縮記帳の対象となる。
- そのとおり正しいです。
- 圧縮記帳の適用を受けるには、以下の条件を満たす必要があります:
- 「法人が所有する固定資産が災害により滅失等し」
- 「保険金を得たうえで、同一性を有する固定資産を取得した場合」
- この場合、「工場建物」および「機械」のいずれも、焼失した資産と同一種類の資産であり、同一事業年度中に取得しているため、圧縮記帳が可能です。
選択肢2:❌ 不適切
工場建物が全焼し、同一事業年度中に受け取った火災保険金で、滅失した工場建物と同一種類に区分される倉庫建物を新築した場合、当該倉庫建物は圧縮記帳の対象とならない。
- 誤りです。
- 圧縮記帳は、「同一の用途・種類」の資産であれば圧縮記帳の対象となります。
- 「工場」と「倉庫」は固定資産税上で同じ建物用途に区分される可能性があり、税務上も柔軟に同一種類とみなされることがあるため、必ずしも圧縮対象外とはなりません。
- この選択肢は断定的に「対象とならない」と述べており、不適切です。
選択肢3:❌ 不適切
工場建物が全焼し、保険金で滅失時に建設中であった他の工場建物を完成させた場合、完成後の工場建物は圧縮記帳の対象となる。
- 誤りです。
- 圧縮記帳の対象となるのは、保険金で新たに取得または建設されたものに限る。
- 滅失時点で「建設中」だった建物に充てた場合、それは新たな取得ではないとみなされ、圧縮記帳の対象にはなりません。
選択肢4:❌ 不適切
圧縮限度額を算出する際、「所有固定資産の滅失または損壊により支出する経費」には、ケガ人に対する見舞金を含めることができる。
- 明確に誤りです。
- 圧縮記帳で認められるのは、代替資産の取得・修繕・移転などにかかる経費のみ。
- 見舞金や慰謝料などは「人的損害補填」であり、圧縮記帳の対象経費に含めることはできません。
✅結論:1が最も適切
補足:圧縮記帳とは?
災害などで固定資産を失った際に保険金を受け取り、それで同じような資産を取得したとき、課税所得の一部を繰り延べることができる制度です。課税の「圧縮」=課税所得の縮小、の意味です。
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