FP2級 問題 公的年金

FP2級

公的年金制度

現在の日本の公的年金制度は「2階建て(2本柱)」の構造になっています。

公的年金制度は「国民年金」と「厚生年金保険」の2本柱(2階建て構造)です。
すべての人が1階部分の国民年金に加入し、雇用されている人は2階部分の厚生年金にも加入します。


✅ 公的年金制度の「2本柱」構造

階層内容対象者
1階部分国民年金(基礎年金)すべての国民(20歳以上60歳未満の全国民)
2階部分厚生年金保険主に会社員・公務員など、雇用されている人

🧱 1階:国民年金(基礎年金)

  • 全員が加入する「共通の土台」。
  • 自営業者・学生・無職の人なども含まれます(第1号被保険者など)。
  • 一定の保険料を納めることで、老齢基礎年金が65歳から支給されます。

🧱 2階:厚生年金保険

  • 主に会社員・公務員が加入する「上乗せ年金」。
  • 給料(標準報酬月額)に応じて保険料と年金額が決まります。
  • 老齢厚生年金や遺族厚生年金、障害厚生年金などが支給されます。

厚生年金保険の被保険者期間


1. 老齢厚生年金の受給要件としての期間

  • 老齢厚生年金を受け取るためには、まず前提として「国民年金の受給資格期間が10年以上」必要です(=老齢基礎年金の受給資格)。
  • そのうえで、厚生年金保険に1か月以上加入していれば、老齢厚生年金も1か月分から支給されます

厚生年金の被保険者期間が「1か月以上」あれば、老齢厚生年金の受給対象になる(ただし、基礎年金の受給資格が前提)。


2. 加給年金額の支給要件

  • 老齢厚生年金に加給年金額(家族手当のようなもの)を上乗せするには:
    • 厚生年金の被保険者期間が20年以上あることが必要。

3. 遺族厚生年金の支給要件

  • 被保険者が死亡した場合に、遺族が遺族厚生年金を受け取るには:
    • 原則として被保険者期間が1年以上必要です。
    • ただし、すでに老齢厚生年金の受給資格がある人の死亡であれば、被保険者期間が10年以上あるかどうかも要件に関わってきます。

まとめ表

用途必要な被保険者期間
老齢厚生年金の受給1か月以上(+基礎年金の資格10年以上)
加給年金額の加算20年以上
遺族厚生年金(老齢年金受給者死亡時)10年以上(一定条件下)
障害厚生年金の受給初診日前に一定期間(保険料納付要件)

寡婦年金(かふねんきん)

寡婦年金(かふねんきん)は、日本の公的年金制度において、国民年金(第1号被保険者)だった夫が亡くなった場合に、遺された妻に支給される特別な年金です。


寡婦年金の概要

項目内容
制度名国民年金の「遺族給付」のひとつ
対象者国民年金第1号被保険者だった夫の死亡時に婚姻関係にあった妻
支給開始原則、妻が60歳から
支給終了妻が65歳になるまで(その後は老齢基礎年金に切り替わる)
金額夫が受け取るはずだった老齢基礎年金の4分の3程度
支給期間5年間(60歳〜65歳)が基本

支給要件(以下のすべてを満たす必要あり)

  1. 夫が国民年金第1号被保険者であり、老齢基礎年金の受給資格(原則10年以上の保険料納付)を満たしていた
  2. 夫が老齢基礎年金を受け取る前に死亡している
  3. 婚姻期間が10年以上継続していた(内縁関係は不可)
  4. 妻が、死亡当時に60歳未満であること
  5. 妻が遺族基礎年金を受け取れない(たとえば子がいない)こと

❗ 注意点

  • 子どもがいる場合 → 遺族基礎年金の対象になります(寡婦年金は支給されません)。
  • 再婚した場合 → 寡婦年金の受給権は消滅します。
  • 夫の年金加入歴が厚生年金のみだった場合 → 寡婦年金の対象外(代わりに遺族厚生年金など)。

まとめ:寡婦年金とは?

寡婦年金は、自営業などで国民年金に加入していた夫が死亡した場合に、子どもがいない妻に60〜65歳の間支給される遺族年金です。
条件を満たしていれば、老齢基礎年金を受け取るまでのつなぎ的な給付として受け取ることができます。

遺族厚生年金(いぞくこうせいねんきん)

遺族厚生年金(いぞくこうせいねんきん)は、厚生年金保険に加入していた人が死亡したときに、その人によって生計を維持されていた遺族に支給される年金です。以下に支給の条件を詳しく説明します。

遺族厚生年金を受け取るための【3つの主要条件】

① 死亡した人(被保険者側)の要件

次のいずれかに該当する必要があります:

該当パターン
a. 厚生年金保険の被保険者のまま死亡
b. 厚生年金保険の被保険者であり、死亡日の前日において1年以上の保険料納付期間がある人
c. 老齢厚生年金の受給資格を満たしていた人
d. 障害厚生年金または障害手当金の受給権者が死亡

② 遺族(受給者側)の要件

死亡した人によって生計を維持されていた、以下の遺族のいずれかが対象になります:

順位遺族の範囲年齢制限など
配偶者(妻)妻には年齢制限なし(ただし子がいない場合は一定年齢以上など制限あり)
18歳到達年度末まで(障害児は20歳未満)
条件は子と同じ
父母60歳以上であること
祖父母60歳以上であること
夫(遺族が男性)55歳以上かつ支給開始は60歳〜、生計維持されていたことが必要

③ 「生計を維持されていたこと」とは?

遺族が以下のいずれかを満たすと判断されます:

  • 被保険者と同一生計だった(同居が基本、別居でも仕送りなどで生計維持があれば可)
  • 年収が850万円未満(目安)または所得が655.5万円未満(目安)

支給開始時期と期間

対象者支給開始支給終了
妻(40歳以上で子なし)夫死亡時生涯(中高齢寡婦加算後、振替加算あり)
妻(40歳未満で子なし)夫死亡時最長5年間(加算なし)
父の死亡時18歳到達年度末まで(または20歳未満の障害児)
原則60歳から生涯(条件あり)

支給額(簡易版)

  • 老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4が基本(平均標準報酬 × 加入期間で算出)
  • 一定条件で中高齢寡婦加算や振替加算が上乗せされる場合もあり

まとめ

遺族厚生年金は、厚生年金加入者が死亡したときに、その生計を維持されていた遺族に支給される年金です。
被保険者の加入状況・死亡時の状態、遺族の年齢・関係・収入などによって支給の可否が決まります

一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級実技試験 2021年9月より対象問題を抽出

国民年金の保険料納付済期間が10年以上あり、厚生年金保険の被保険者期間を有する者は、原則として、65歳から老齢基礎年金および老齢厚生年金を受給することができる。

正しい記述です
老齢年金の受給には、原則として老齢基礎年金の受給資格期間(10年以上)が必要です。さらに、厚生年金保険の被保険者期間があれば、老齢厚生年金もあわせて受給可能です。

65歳到達時に老齢厚生年金の受給権を取得した者が、厚生年金保険の被保険者期間を20年以上有し、かつ、所定の要件を満たす配偶者がいる場合、当該受給権者に支給される老齢厚生年金に加給年金額が加算される。

正しい記述です
加給年金額は、老齢厚生年金の受給権者が、一定の要件(被保険者期間20年以上など)を満たし、生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合に支給されます。

夫の死亡当時に60歳未満の妻が寡婦年金の受給権を取得した場合、寡婦年金は、原則として、妻の60歳到達月の翌月から65歳到達月まで支給される。

正しい記述です
寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者だった夫が死亡し、一定要件を満たすに支給される年金で、60歳から65歳になるまでが支給期間です。

老齢厚生年金を受給している者が死亡し、死亡した者によって生計を維持されていた配偶者がいる場合、配偶者は、死亡した者の厚生年金保険の被保険者期間が10年以上あれば、遺族厚生年金を受給することができる。

不適切な記述です(誤り)
遺族厚生年金は、原則として被保険者が死亡した場合や、老齢厚生年金の受給資格を得る前に死亡した場合に支給されます。
しかし、「老齢厚生年金を受給中の者が死亡した場合」については、その者が生前に受給権を有していた期間を含めて、遺族に年金が支給されるかどうかは一定の要件があります。特に、単純に「被保険者期間が10年以上あるだけ」では受給要件を満たしません

「被保険者期間が10年以上ある」というだけでは不十分で、もう一つ重要な条件=生計維持関係が必要です。


✅ 条件を整理すると

【老齢厚生年金受給者が死亡した場合】

その遺族が遺族厚生年金を受給できる条件は、以下の2つを両方満たすことです:


① 被保険者期間が10年以上
  • 死亡した人が厚生年金の被保険者期間10年以上 → ✅ OK

② 遺族が「生計を維持されていた者」であること

以下のいずれかを満たせばOKです:

  • 同居していた配偶者(実質的に生活を共にしていた)
  • 別居でも仕送りなどで生活費の援助を受けていた
  • 遺族の年間収入が850万円未満または所得が655.5万円未満

❗ よくある誤解

「老齢厚生年金を受給していた人が亡くなったから、厚生年金が自動的に配偶者に引き継がれる」
→ これは誤解です。

  • 遺族が「生計維持されていた者」でなければ、遺族厚生年金は出ません
  • 例えば、長年別居していた元夫婦で、生活費の援助もない場合などは支給されません。

✅ 遺族の対象者(支給順位)

遺族厚生年金を受け取れるのは、以下の順に該当する者で「生計維持されていた」人です:

順位対象者
① 妻年齢制限なし、ただし要生計維持
② 子18歳到達年度末まで(障害児は20歳未満)
③ 孫同上
④ 父母60歳以上で生計維持
⑤ 祖父母同上
⑥ 夫55歳以上(受給は60歳〜)+生計維持関係

✅ まとめ

老齢厚生年金を受給していた人が死亡した場合でも、
遺族厚生年金を受け取るには「被保険者期間が10年以上」に加えて、
遺族が“生計維持されていた”と認められる必要があります
単に10年以上加入していただけでは不十分です。

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