雇用保険の保険料は、主に3つの目的別に区分されており、それぞれに対応する保険料率が設定されています。以下にその3つの保険料の種類と内容について詳しく説明します。
🟧 雇用保険の保険料の種類(目的別)
区分 | 内容 | 保険料を負担する者 |
---|---|---|
1. 失業等給付に係る保険料 | 主に失業手当や育児休業給付・介護休業給付の財源となる保険料 | 事業主と労働者が折半で負担 |
2. 雇用保険二事業に係る保険料 | いわゆる「二事業」。主に以下の事業主向け施策:・雇用安定事業(助成金など)・能力開発事業(職業訓練等) | 事業主のみが負担 |
3. 育児休業給付に係る保険料(※失業等給付の中に含まれる) | 出産・育児により仕事を休む労働者に対する育児休業給付金の財源 | ※保険料としては失業等給付に含まれる扱い(別建てではない) |
🟦 詳細な解説
① 失業等給付に係る保険料
- 対象となる給付:
- 基本手当(失業給付)
- 育児休業給付
- 介護休業給付
- 高年齢求職者給付金
- 保険料率(例:2024年度):
- 一般の事業:1.35%(労使折半 → 労働者 0.6%、事業主 0.75%)
- 建設業や農林水産業は若干異なる
- 特徴:
- 労働者が負担する唯一の保険料
- 毎月の給与から天引きされる
② 雇用保険二事業に係る保険料
- 構成する事業:
- 雇用安定事業:助成金(雇調金、トライアル雇用助成金など)
- 能力開発事業:人材育成支援助成金、職業訓練支援など
- 保険料率(2024年度):
- 0.35%(すべて事業主が全額負担)
- 特徴:
- 労働者は一切負担しない
- 雇用安定・人材育成を目的とする企業支援の色合いが強い
③ 育児休業給付(※失業等給付に内包)
- 特徴:
- 育児休業給付金は、失業等給付の一部として扱われる
- 別途「育児休業保険料」があるわけではない
- 給付内容(参考):
- 休業開始から6ヶ月:休業前賃金の67%
- 6ヶ月以降:50%
🟩 まとめ(イメージ)
保険料の使途 | 財源になる給付 | 誰が負担? | 備考 |
---|---|---|---|
失業等給付 | 失業手当、育児・介護給付等 | 労使折半 | 保険料率1.35%(例) |
二事業保険料 | 助成金、職業訓練等 | 事業主のみ | 0.35%(例) |
育児休業給付 | 育児休業給付金 | 上記の失業等給付に含まれる | 別建てではない |
✅ 「二事業」の意味
雇用保険制度の中で、「二事業」とは次の2つの事業を指しています:
① 雇用安定事業
労働者の雇用の安定を図るために行う支援事業です。たとえば:
- 雇用調整助成金(景気悪化時の解雇回避策)
- トライアル雇用助成金(未経験者の雇用促進)
- 高齢者・障害者の雇用支援
② 能力開発事業
労働者の職業能力の向上や再就職支援を目的とした施策です。たとえば:
- 職業訓練の費用補助
- 事業主向けの人材育成助成金
- 公的職業訓練校の運営など
🟦 つまり、「二事業」とは…
「雇用安定事業」と「能力開発事業」という2つの事業の総称であり、
この2つのために徴収する保険料が「二事業保険料」と呼ばれます。
🔍 補足情報
- この「二事業」は、**昭和50年(1975年)**の雇用保険制度創設時からある言い方です。
- 保険給付(失業手当など)とは性質が異なり、主に事業主の雇用維持努力を支援する政策的事業です。
- 財源はすべて事業主が負担します。
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